時計を作ろう
■ 基本スペック
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○グレアム静止型脱進機 |
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○振子の周期を2sec(半周期で1sec)：竿の長さ1m |
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○ガンギ30T ：1rev/min |
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○重錘動力 1ヶ月巻 ：巻上時も振子運動の停止･周期変動は回避 |
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○ギア・ピニオンカッターの制約から、部品種類・点数を極力削減 |
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上記基本スペックを踏まえ輪列のギア比と重錘重量を検討します。 |
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基本的な輪列は古式に則って次図様式とします。[1] |
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目標は毎秒秒針がクオーツ時計のように運針することにありますので、 |
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Escape Wheel (秒針)：1[rev/min] |
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Center Wheel (分針)：1[rev/h] |
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となります。従ってこの間のギア比は60:1となります。 |
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このギア比を3rd Wheelを介し二段で実現するために |
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Escape Pinion：3rd Wheel＝10T：75T |
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3rd Pinion：Center Wheel＝10T：80T |
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60＝(75/10)×(80/10) |
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としました。 |
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本来でしたら、[2]に拠れば伝達効率の点からPinionは12T以上が望ましいとあるのですが、手持ちのサイクロイド カッターやデプスィング･ツールの仕様からこの歯数にしました。 |
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次に動力源となるGreat WheelとCenter Wheelのギア比について検討します。 |
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重錘の落差と重量で決まる位置エネルギーが、1ヶ月間に供給される全てのエネルギーとなります。このエネル ギーがどの程度の値なのか手元の資料から推定します。 |
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Lenzkirch  The Mechanica M1  |
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先般購入したLenzkirch Vienna Regulatorの仕様を実機から測定すると、重錘の重量が1.13[kg]、落差が395 [mm]で8日巻ですから、1日あたりの消費(供給)エネルギーは |
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1.13×0.396×9.8／8＝547E-3[Joul/day] |
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となります。一方目標としているErwin SattlerのThe Mechanica M1の仕様は仕様書と写真から推定すると、重錘 の重量が3[kg]、落差が550[mm]で一ヶ月巻ですから、1日あたりの消費(供給)エネルギーは |
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3×0.550×9.8／32＝505E-3[Joul/day] |
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となり、概ねの値がわかりました。 |
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この値を比較するとThe Mechanica M1はLenzkirchに対し1割程度効率が良いことがわかります。振玉(Bob)の運 動方向投影面積が大きく、空気抵抗が大きいにもかかわらず効率が良いという事は各軸受けにボールベアリン グを使っている事によるのではないかと推測されます。 |
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本題に戻りますが、この結果から1ヶ月巻で必要とされるエネルギー量は自作機の精度不良に拠る効率低下を１ 〜２割見込んでおよそ600E-3[Joul/day]見込んでおけば概ね良さそうです。ここから逆算すると |
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重錘重量[kg]×落差[mm]＝{(600E-3×32)/9.8}×1000≒2000[kg*mm] |
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を得ます。 |
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今回の振子は周期が2[sec]ですから竿の長さは概ね1[m]です。ムーブメントや文字盤の大きさなどから竿長の3 /4程度を落差の限界と考えると、前式の結果を踏まえ |
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重錘重量[kg]×落差[mm]＝W[kg]×750[mm]＝2000[kg*mm] |
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∴W≒2.7[kg] |
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となります。 |
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重錘重量が決まりましたので、ここでようやくGreat WheelとCenter Wheelのギア比について考えることになりま す。 |
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何故か理由は知りませんが、重錘の懸架は上図のようにするのが古式に則った手法のようです。 [2] |
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この方法ではバレルの巻き上げ量の半分が重錘の落差になります。 |
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現在最大落差は750[mm]としていますので、巻き上げ量は1500[mm]となります。 |
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仮に直径40[mm]のバレルを使ったとすると、バレルの円周長は126[mm]ですから巻上げに約12回転要します。 |
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1ヶ月巻きですからCenter WheelとGreat Wheel間のギア比は |
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1ヶ月間のCenter Wheel総回転数が |
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32[day]×24[rev/day]＝768[rev] |
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この間にバレルの総回転数は12[rev]、よって所要ギア比は |
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768／12＝64 |
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を得ます。 |
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このギア比を1段で達成することは容易ではありません。Center Pinionを10Tとすると、Great Wheelが640Tになっ てしまいます。あまりに巨大なWheelになってしまいます。そこで、二段で減速することにします。 |
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先にCenter Wheelを80Tと定めましたが、10T/80Tを二段行えばギア比64を得ることが出来ます。同じ部品を多 用することが出来ます。これは製作工程上極めて有利なことです。 |
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以上から輪列の全容が決まりました。 |
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手書きで見難いのですが参考にはなると思います。 |
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暫定的な図面を描きました。 |
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切り終えたギアを並べたところです。イメージが見えてきます。 |
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参考文献 |
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[1] 「Making Clocks」by Stan Bray、Nexus Special Interests Ltd.、2001、124pp、ISBN 1-85486-213-8 |
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[2] 「Clock Design & Construction」by Laurie Penman、American Watchmakers-Clockmakers Institute、2002、 144pp、ISBN 0 918845 19 X |
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