時計を作ろう
■ 基本スペック
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仕 様 ： 振子長 約１ｍ、 周期 ２秒、 温度補償付 |
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簡単に表現すると、振子の周期は竿の長さで決まります。 |
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高校の物理の時間に出てきた単振子の半周期を表す式 |
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円周率：3.14159 |
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ｇ：重力加速度、9.80665[m/sec] |
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に拠れば、振子周期は竿の長さと重力加速度で決まります。振り玉（Bob)の質量も関係ありません。 |
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もちろん振り角が極めて小さいという条件での近似式ですから、その条件は忘れてはいけません。 |
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温度に関係する要素は竿の長さ「ｌ：エル」です。温度の上昇とともに竿が伸びて周期も長くなります。 |
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夏には「遅れ」、冬には｢進み｣の誤差が生じます。 |
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何らかの方法で竿の伸びをキャンセル(補償)する方法が必要となります。 |
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ここで、温度補償をしなかった場合の誤差に関し定量的に把握してみます。 |
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竿を鉄として、５℃温度上昇した場合、その伸びを約５０ミクロンとすると、前述の振子の周期式に拠れば、 |
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振竿１ｍでの周期 |
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1.00320[sec] |
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振竿１ｍ＋５℃温度上昇での周期 |
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1.00323[sec] |
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注）温度差による偏差を定量的に把握するのが目的ですから、 |
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1[sec]との偏差は無視します。 |
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となり、竿の伸びによって３×１０Ｅ−５の偏差を生じます。 |
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この結果を日差に換算すると2.6[sec]となります。 |
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ここで注意しなければならないことは、上記結果は定温時の日差であり、１日の間には気温差がありますので、 平均気温付近で歩度調整を行えば日差を抑制できるに違いありません。 |
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図で示すと次のようになります。１日で進みと遅れが相殺する調整点があるはずです。 |
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その点(線)を赤で示しました。 |
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温度補償を行うことにより、調整点である｢赤線｣からの進みと遅れの偏差が小さくなることが期待できます。 |
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図示すると次のようになります。縦軸に御注意下さい。 |
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竿の長さの変動が少なくなれば歩度の変動も抑制されます。 |
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歩度の変動を抑制するのが「温度補償」であり、日差を押さえ込むのが「歩度調整」だと考えています。 |
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歩度調整は振り玉位置の調整に尽きると思います。 |
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用語に関して不勉強な点がありますので御指摘いただければ幸いです。 |
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気圧が上昇すると、振子全体にかかる｢浮力｣が増加します。浮力が増加すると見かけ上軽くなるので、等価的に 重力加速度ｇが減少したことになります。その結果周期が長くなり｢遅れ｣が生じます。 |
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これも補償が必要となりますが、簡単化のため当面は温度補償のみ取り組むこととします。 |
■ 温度補償
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温度補償には数種類あり、その特質を比較しますと次のようになります。 |
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● 水銀入振り玉 取り扱いが厄介 |
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● インバー合金竿 ｢枯れ(エージング)｣を十分に行わないと伸びが出る、入手方法、コストが課題 |
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● 木製竿 十分な「枯れ」が重要、正規の温度補償ではない |
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● すのこ型竿 次項参照 |
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今回は偉大なる時計師 John Harrison が１７２６年に考案した｢すのこ型振子｣の原理を取り入れて温度補償を 行ないます。 |
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次図がHarrisonの考案したすのこ型振子の簡易型です。 |
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構造も簡単で取り扱いも容易、コスト面での心配も無く、設計の自由度も高い構造です。 |
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線膨張率を 金属A ＜ 金属B とすることにより、振り玉の位置が変わらないようにする機構です。 |
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ちなみに線膨張率は次の式で定義されます。 |
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Ｌｔ＝Ｌａ×（１＋αｔ） |
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ａ [℃]で長さ Ｌａ の棒が ｔ [℃]の温度上昇で Ｌｔ の長さになった場合、αを線膨張係数と呼ぶ |
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出典：｢基礎時計読本｣ |
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この構造では５本で竿を構成しますので、上図のように「金属Ａ」２本分の伸びを｢金属Ｂ」で吸収することになりま すから、線膨張率は２倍の関係が必要です。 |
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線膨張率（金属B）＝線膨張率（金属A）×２ ・・・ 式１ |
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当初Harrisonの考案では上図に加えさらに一往復させ９本で竿を構成していたようです。 |
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その場合、上式は次のようになります。 |
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線膨張率（金属B）×２＝線膨張率（金属A）×３ ・・・ 式２ |
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通常、金属Ａに鋼・鉄、金属Ｂに真鍮を使っています。それぞれの線膨張率は |
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鋼・鉄 10.5×10E-6 〜 12.4×10E-6 [1/K] |
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真 鍮 18.0×10E-6 〜 19.3×10E-6 [1/K] |
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出典：｢基礎時計読本｣ |
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定量的なイメージとしては |
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１ｍの棒が１℃の温度上昇で、１０〜２０ミクロン（1/100〜2/100ｍｍ）伸びる |
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ということになります。 |
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組み合わせにもよりますが、鋼･鉄と真鍮では線膨張率の比は 1.45 〜 1.84 の間にありますから、式２から要求 される比 1.5 が含まれます。鋼･鉄と真鍮の組合わせの理由が理解できます。 |
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一方、上記簡易型の場合、式１で要求される比が 2.0 となりますので、鋼材と真鍮では不足します。 |
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入手が容易な金属材料で鋼材の２倍近い線膨張率のものを探すと、 |
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アルミ 23.6×10E-6 |
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出典：｢1991在庫カタログ｣滑川軽銅株式会社 |
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とありますので、鋼･鉄に対し 2.0 倍が確保できそうです。 |
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このスノコ型ですが、今目指している測定機然としたイメージに合致しません。そこで、参考文献に挙げた 「Compensating Pendulums and How to Make Them」にある細い板を積層した竿をアレンジすることにしました。 |
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設計のステップとして |
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１：温度補償 |
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２：周期補正 |
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の二段構えで検討を進めます。 |
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概要図は材料入手の容易性、加工精度などを加味してあります。 |
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竿の軟鉄部分は温度上昇と共に下へ、アルミは上へ伸びることで相殺し、振り玉中央部分の位置が変動しない 設計です。 |
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単振子の場合、周期T=2secとなる竿長l0は次式より |
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現実には単振子と異なり竿重量を無視できないため、第二ステップで周期を補正します。 |
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この値は初期値として使います。 |
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これによりL1は |
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を得ます。次にL2を求めます。 |
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振子系全体での熱膨張は次式となります。 |
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従って、 |
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ここで、熱膨張即ち今回の設計では線膨張係数αは軟鉄、アルミそれぞれ |
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従って、先に求めた |
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を代入すると |
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を得ます。 |
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以上で基本的な寸法が決まりました。 |
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次に竿重量を考慮し周期が2secとなる振子の設計を続けます。 |
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竿質量を考慮する振子ですから、剛体振子として計算を進めます(1)。 |
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重心をGとする剛体を支点Oで支え、重力のもとで振動させます。 重心のまわりの慣性モ−メントをI、質量をMと すれば、支点Oのまわりの慣性モ−メントKは、 |
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となり運動方程式は |
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となります。ここで長さ |
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とすると、先の運動方程式は |
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となり、単振子の運動方程式と一致します。 |
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以上より、剛体振子の周期は |
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●支点Oのまわりの慣性モ−メントK |
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●支点Oと重心G間距離h |
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●剛体質量M |
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が判れば求めることができます。 |
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今回採用する竿構造は一端を支点とする細い棒の集合体ですから、全体の慣性モーメントは各棒の慣性モーメ ントの総和で求めることができます。 |
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早速各要素に関し検討を進めます。一本の細い棒の支点まわりの慣性モーメントは |
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となります(2)。 |
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次に、この棒単体での振子周期Tを求めます。 |
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ここで、重心は棒の中央ですから、 |
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これを代入すると |
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を得ます。 |
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参考文献 |
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(1) 宇都宮大学教育学部教育学研究科HPより |
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物理学教室、「基礎物理学実験指導書」、ボルダの振子 |
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(http://ks001.kj.utsunomiya-u.ac.jp/~buturi/UUinOnly/ksb_html/yukari4/node1101.html) |
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(2) 工科系の基礎物理学、誉田克彦・蓬田和夫・紺野忠 編、学術図書出版社、1998年 |
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手元にある3mmφ, 1mの軟鉄棒の片端をナイフエッジで支持して支点とし、微小角振幅させて周期を測定しま す。振り玉がない竿だけの振子になります。今回のテーマは単振子ではなく、竿質量が無視出来ない場合の周 期ですから、この振子は単振子の対極に相当します。 |
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クリップでカッターナイフと軟鉄棒を共挟みにし、ピンセットに跨らせてナイフエッジを構成します。挟み込んだ部 分は約10mm程ですから、全長は0.99mとなります。 |
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このとき周期は |
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を得ます。 |
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一方、実測値はムービーにて10周期分で計測したところ1.64 secでした。 |
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誤差も無く、計算値と高い精度で一致しています。 |
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この結果を吟味すると、長周期を得るために竿長を伸ばしても、振り玉に対し竿質量が十分小さくなければ効果 は出ない、ということがわかります。 |
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上記計算と実測が一致したことに安心し、さらに計算を進めます。 |
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ペラの形状、支点位置などを考慮し図面を起こしました。 |
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竿質量が無視できないため振子系の重心が上方へ移動し、単振子での2sec周期となる994mmよりも振り玉位置 は下に移行することは間違いありません。その移行分も加味しての竿長とします。以下の図面では周期補正分 は含んでいません。正確な形状が決定してから補正値を算出します。 |
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次の図は側面図に彩色しました。黒系が軟鉄、赤系がアルミ、黄土色が真鍮です。黄色がネジ類です。 |
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基本的に竿は軟鉄・アルミ共に10mm×2tの平角棒で、最下端の振り玉を提げる部分は4mmφの軟鉄棒にM4 のネジを切ります。ネジの周囲を内径4mmφ、外径6mmφのアルミ管で覆いアルミ平角棒で補償しきれなかった 温度補償を行います。歩度調整は最下部のローレット付ナットで行います。 |
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三層平角棒はバラけないように貫通穴を開けて書類を綴じる組みネジでスライド出来るように軽く締結します。 |
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軟鉄とアルミの結合部は位置がズレないようにサラビスで固定します。 |
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以上の構造をもとに、温度補償と周期が両立する寸法を探ります。 正攻法としては連立方程式を建て解析的に解を求める方法がありますが、余りに煩雑になることが予想されるこ とと、工作精度や最後の調整代（シロ）を考慮し、エクセルを利用したニュートン・ラプソン的力技（チカラワザ）解 法で上記寸法を補正します。 |
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途中詳細は省略しますが、上記の流れで振子系の設計を完了させました。 |
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「ACCURATE CLOCK PENDULUMS」, p98 より |
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引用されているペラの寸法はmm換算で |
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厚：一般的には 0.05 〜 0.25mmで、薄ければなお良い |
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幅：3.2 〜 38mm、小さければなお良い |
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長：3.2 〜 13mm、短ければなお良い |
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材質：スプリング鋼、ベリリウム銅、リン青銅、ステンレス・・・ |
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等が他論文からの引用の形で示されています。 |
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「Clock Design & Construction」, p95 より |
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振り玉の重量とペラの断面寸法に関する指針です。 |
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kg と mm に換算してあります。 |
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Bob, Width×Thickness |
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18kg, 18mm×0.3mmt |
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9kg, 13mm×0.2mmt |
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4.5kg, 6.3mm×0.2mmt 1.26[mm^2] |
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2.3kg, 5mm×0.15mmt 0.75[mm^2] |
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900g, 5mm×0.05mmt |
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450g, 2.5mm×0.005mmt |
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230g, 1.3mm×0.005mmt |
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前述の設計によると、振子系の重量は約3kgです。上記指針によると1kg 当たりの所要断面積は 0.3mm^2 程度 が得られますから、3kg 荷重の場合 0.9mm^2 を要することになります。幸いなことにスプリングリボンと称する焼 入薄板鋼(10mm×0.1mm)がホームセンターで入手可能で、所要断面積を満足することが出来ます。今回はこれ を使うことにします。 |
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一方長さですが、前述の指針では「長：3.2 〜 13mm、短ければなお良い」とありますから、あまりに漠然としてい ます。同書には振り玉重量7.2kg、半周期1sec、ペラ幅12.5mm、ペラ長19mmが例として挙げられています。全く見 当がつきません。他には単体で10mm長のペラが例示されていましたから、この辺りで手を打つことにします。 |
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振子の竿中間部に微小歩度調整用の重りを載せるWeight Trayを検討します。 |
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ロンドンのビッグベンにもある機構です。1ペニー硬貨を載せて微小歩度調整をしています。 |
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高精度の振子時計を停止させないで歩度を調整する方法として古来より行われている手法です。 |
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現在市販されている最高精度のClockであろうサトラーの"Secunda Accurata 1958"にも同様のステージが取り 付けられています。黄色丸の部分です。 |
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ちなみに"Secunda Accurata 1958"はカタログデータで月差1秒以下を誇る見事なClockです。 |
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ところで、このWeight Trayを竿のどの位置にすれば良いのか、その解答が「ACCURATE CLOCK PENDULUMS」 にありました。p168, Fig 24.1 に素晴らしいグラフがあります。 |
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振子の竿にウエイトを乗せた場合、どの位置でどの程度歩度が変化するかを示したグラフです。どうやらこのグ ラフは本書以外では見る事が出来ないグラフのようです。 |
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振子の回転中心と振玉中心間の1/2の位置が最も感度良く歩度が変化する点です。多少上下にズレてもその差 は小さいので位置に関する精度は緩くても良さそうです。 |
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これでWeight Trayを取り付ける位置が決まりました。 |
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